Column / Vol.06 User Research

なぜリサーチは「定量だけ」でも 「定性だけ」でも足りないのか

数字で全体を知り、言葉で理由を知る。 良いリサーチはその両方でできている

/ 読了目安 約 7 分 / 編集部
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「定量でいくべきか、定性でいくべきか」。 リサーチをこれから始めようとするとき、最初にこの問いの前で立ち止まる方は、少なくありません。

けれど、ふたつは「どちらが優れているか」を競う関係ではありません。定量は「どれくらい」を、定性は「なぜ」を見る、役割の違う道具です。見ているものが違うのだから、本来は比べようがない。

だとすると、ほんとうに考えたいのは「どちらを選ぶか」ではなく、「どちらの問いから入り、どこで手をつなぐか」のほうかもしれません。 今日は、二項対立の手前から、数字と言葉が協力する順番を整理してみます。

The false binary

「どちらが正しいか」は、噛み合わない問い

定量と定性が対立して語られるのは、たぶん「限られた予算と時間で、どちらに賭けるか」という現実があるからです。アンケートを大きく回すのか、数人にじっくり聞くのか。どちらも同時には、なかなかできません。

でも、選択を迫られること自体と、ふたつが優劣の関係にあることは、別の話です。「100 人中 70 人がこう答えた」という事実と、「その 70 人は、なぜそう答えたのか」という理由は、片方だけでは絵になりません。数字は広さを、言葉は深さを受け持っていて、どちらが欠けても、判断はどこかで揺らぎます。

「どちらが正しいか」と問うと、リサーチは勝ち負けの話になってしまう。けれど問いを「どこで補い合うか」に置き換えると、急に組み立てやすくなってきます。

Two lenses

数字は「どれくらい」、言葉は「なぜ」

まず、ふたつがそれぞれ何を得意とするのか。役割を、できるだけ素朴に並べてみます。

Quantitative

定量 どれくらい・どの割合で

数字は、広さに強い道具です。「全体の何割がそう感じているか」「A と B でどれだけ差があるか」を、たくさんの人からまとめて受け取れます。一人の強い声に引きずられず、全体の傾向をつかみたいときの土台になります。ただ、数字は「なぜ」までは映しません。70% という結果は見えても、その背後にある理由は、数字の外にあります。

Qualitative

定性 なぜ・どんなふうに

言葉は、深さに強い道具です。「なぜそう感じたのか」「どんな場面で困ったのか」を、本人の語りからすくい取れます。想定していなかった視点や、こちらが立てた問いそのもののズレに気づけるのは、たいてい言葉のほう。ただ、聞ける人数は限られるので、「それが全体でどれくらいか」までは、言葉だけでは見えてきません。

並べてみると、片方の弱点を、もう片方がちょうど補っていることが見えてきます。数字に映らない「なぜ」は言葉が、言葉ではつかめない「どれくらい」は数字が受け持つ。だから、本当の問いは「どちらか」ではなく、「どうつなぐか」に移っていきます。

The handshake

片方の問いが、もう片方を呼ぶ

ふたつが手をつなぐのは、同時に使うときというより、順番に橋を架けるときです。よくあるのは、こんな往復。

仮説を、数で確かめる 偏りの理由を、聞きにいく 定性 なぜ・どんなふうに 定量 どれくらい・どの割合で
図:定性と定量は、問いを渡し合って一周する

たとえば、インタビューで出てきた「この機能、こわくて使えない」という声(定性)。それが一部の人の話なのか、多くの人に共通する感覚なのかは、アンケート(定量)で確かめられます。逆に、「ある層だけ離脱率が高い」という数字(定量)が出たら、その人たちに「なぜ」を聞きにいく(定性)。

言葉が仮説をつくり、数字がその広さを確かめる。数字が異変を見つけ、言葉がその理由を埋める。 どちらが先でもかまいません。大事なのは、片方で出てきた問いを、もう片方に渡していく往復が生まれているか、です。

Why it lasts

「生き続ける」リサーチの、つくり方

この往復が回りはじめると、リサーチは「一度やって終わり」になりにくくなります。数字が次の問いを生み、その問いが次のインタビューを呼ぶ。結果が、次の調査の入り口になっていくからです。

逆に、定量だけ・定性だけで完結させようとすると、リサーチはどこかで行き止まります。アンケートの数字は配られて終わり、インタビューの語りは一部の人の記憶に残って終わる。せっかくの発見が、次につながらないまま、静かに消えていきます。

だから、「定量か、定性か」と一度きりの二択で考えるより、「この問いは、どちらから入って、次にどちらへ渡すか」と順番で考えてみる。そうやって問いがバトンのように受け継がれていくとき、リサーチは組織のなかで、ゆっくりと生き続けていきます。

Research patterns

RapiQ では、入る順番から選べる

この「どちらから入って、どこで渡すか」を、RapiQ は調査の組み方として用意しています。 定性・定量・複合の 3 つから、目的に合う入り口を選べます。

定性

定性のみ

言葉から入る組み方。仮説のタネや、想定していなかった視点をすくい上げたいときの入り口です。

定量

定量のみ

数から入る組み方。全体の傾向や、A と B の差を、広くつかみたいときの入り口です。

複合

定量 → 定性

まず数で広さをつかみ、その偏りの「なぜ」を言葉で深掘りする。ひとつの流れの中で、数字と言葉の往復まで持っていく組み方です。

「定性 → 定量」の順で深めたいときは、まず定性をひとつのプロジェクトとして回し、そこで生まれた仮説を、続く定量で確かめにいきます。入り口がどちらでも、数字と言葉をつなぐ往復を、調査の設計として選べる。それが、せっかくの往復を一度きりにしないための土台になります。

そして、定量と定性をうまく連携させること自体、本来はリサーチの専門性が要る仕事です。RapiQ はその連携の段取りまで用意しているので、専門のリサーチャーでなくても、聞きたいことがある人なら誰でも、数字と言葉の往復を始められます

Keep the loop turning

数字と言葉の往復を、止めないために。

定量と定性を行き来し続けるいちばんの壁は、たいてい「毎回、立ち上げが重い」こと。聞くたびにゼロから設計し直していると、往復はどこかで止まってしまいます。 RapiQ は、ユーザー調査の立ち上げを軽くして、数字と言葉の往復を "続けられる" 状態にするためのリサーチ基盤です。

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